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長かった棒と溶けゆく氷
【不思議なプチストーリー・28】 〜過去の栄光と消えたい心〜
短い棒があった。
棒は、かつて、“世界で一番長い棒”だった。
しかし、今は短く折れてしまっていた。
溶け行く氷があった。
氷は、かつて、“世界で一番大きな氷”だった。
しかし、今は小さく溶けてしまっていた。
棒も氷も、過去の栄光を思い出していた。
“世界一”と謳われた自分のことを。
あの、賞賛の眼差し、喝采、感嘆のため息を。
あの頃の誇り、充実感を。
しかし、今は世界一なんかではない。
かつての自分と比べると、自分が惨めに思え、恥ずかしいくらいだった。
氷は、今の自分が恥ずかしいので、早く溶けて消えてしまいたかった。
そして、望みどおり、溶けて消えつつあった。
かつての栄光に浸りながら、幸せに消えつつあった。
棒も、自分が恥ずかしいので、消えてしまいたかったが、消えることはできなかった。
消えることのできる氷がうらやましかった。
かつての栄光を思い出せば思い出すほど、それが重荷になって、よけい今の自分が恥ずかしく思えた。
棒は、「誰か僕を燃やしてくれないかな。」と願った。

