スポンサードリンク
走る忍者
【不思議なプチストーリー・23】 〜ふと出てくる罪悪感〜
忍者は今日も走っていた。
今日は、敵の城への偵察が、彼の任務だった。
君主様のため、忍者は走っていた。
そして、家で待っている愛する妻と、かわいい娘のためにも。
「全力で走り、敵の状況を的確に把握し、全力で戻り、簡潔に報告せよ。」
と、おおせつかっていた。
だんだん疲れてきた忍者は、「少し手を抜いて走ろうかな。」と思った。
「ちょっとスピードを落とそう。疲れた。」
「別に誰も見てないし。」
「少し早めに出発してきたし。」
かなり疲れている忍者は、全力で走り続けるのが嫌になり、どんどん弱音が出てきた。
だが、忍者は、スピードを緩めることなく、全力で走り続けた。
自分を信頼してくれている君主様のことを思うと、そんなことはできなかったのだ。
「この“罪悪感”ってのが、じゃまなんだよなぁ。」
「この“罪悪感”さえなければ、ゆっくり走ったり、休んだり、自分の思うことを思うがままにできるようになるんだがなぁ。」
「自由になれるんだがなぁ。」
と、忍者は思った。
しかし、忍者は知っていた。
“罪悪感”がなくなってしまえば、愛する妻に対してもかわいい娘に対しても、“愛着”がなくなってしまうことを。
それは、そんな人生は、忍者にとって、考えるだけでも恐ろしいことだった。
忍者は、全力で走り続けながらも、自分の心に“愛着”という感情をもたらしてくれている“罪悪感”に感謝し、自らの胸を抱きしめた。
その間、一瞬ではあるが、忍者の走りは失速したが、忍者はそのことに関して“罪悪感”はなかった。

