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よく切れるハサミ
【不思議なプチストーリー・20】 〜性格と才能とアイデンティティ〜
ハサミは、紙を切り裂くのが嫌いだった。
切られた紙などは、痛々しくて、見ていられなかった。
そして、「痛々しく切り裂いているのは自分なのだ。」ということを思うと、自分が嫌になった。
「なぜ自分は、“ハサミ”なんかに生まれたのだろう。何も切り裂きたくなんかないのに。」
と、ハサミは思った。
「接着剤にでも生まれていれば良かったんだ。」
…とも。
「せめて、“切り裂く”という才能さえなければなぁ…。」
ハサミはそう考え、切り裂くことのできなくなった自分を想像してみた。
想像した自分は、何も切り裂かなくて、傷つけないので、気分が良さそうに思えた。
だが、こうも思った。
「切り裂くことのできないハサミなんて、ハサミと呼んでいいのだろうか?」
「それは、ハサミではなく、他の何でもなく、“なんでもなし”なんじゃないのだろうか?」
「存在する意味がないんじゃないだろうか?」
ハサミは、“自分の存在意義がなくなる”と思ったら、怖くなってしまった。
「意味のない存在になるくらいなら、嫌だとしても、ハサミとして切り裂き続けたほうが、いいかもしれない。」
と、ハサミは思った。
切り裂くことは嫌だった。
嫌でたまらなかった。
だが、切り裂く存在である、ハサミという自分を認めることにした。
ハサミがそうやって自分を認めると、皮肉なことに、さらに切れ味が良くなった。

