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純真な少年
【不思議なプチストーリー・17】 〜“本当に純真”というパラドックス〜
純真な少年がいた。
母親を大事にし、年寄りをいたわり、いつもニコニコして元気がよかった。
お菓子は友達に多くあげるし、人の嫌がる力仕事も進んで手伝っていた。
少年をとりまく人たちは、「なんて、純真な子だろう。」と言って感心していた。
少年自身、“純真”と呼ばれるのは、悪くない気持ちだった。
いや、そうとうに嬉しかった。
しだいに少年は、「純真だねぇ。」と言われることに、身のふるえるような快感を覚え始めた。
少年は、もっと“純真”であると思われたくなってきた。
もっと“純真”であると言われたくなってきた。
少年は、自分が何をすれば“純真”と思われるか・言われるかを、分析してみた。
だんだん少年には、どのようなことをすれば、人から“純真”と言われるか・思われるかが分かってきた。
そう、“純真”のコツをつかんだのだ。
少年は、いいことや感謝されることを、以前以上に行うようになり、“純真”と言われる回数が、日増しに増えていった。
ついに、少年の行動原理のほとんどが、“純真”につながるようになった。
「純真だね。」と言われる快楽・快感をむさぼりたいがために、少年は行動するようになったのだ。
今日も少年は、ニコニコしながら「純真だねぇ。」と言われていた。
少年は、その言葉がもたらす快楽に身を震わせながら、
「もっと、純真な子になろう。」と思い、ほくそ笑んだ。

