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嘘つきな鏡とカメラ
【不思議なプチストーリー・14】 〜“反対”という、主観にしなだれかかるもの〜
嘘つきな鏡がいた。
美しいものを醜く映し、おいしそうな物をまずそうに映す。
そんな鏡だった。
「オレは世の中のことを、“反対”に映してやっているのさ。」
これがその鏡の口ぐせだった。
確かに、この鏡に映ったモノは、そこにある現実のモノとは違うものが映るのだ。
おどろくべきことだが。
そんなとき、カメラが言った。
「君の映しているのは“反対”なんかじゃないよ。“変化”さ。君はただ、映るものを面白半分にいじって、満足しているだよ。」
カメラは、現実を現実のまま映す(撮る)のが好きだったし、実際、カメラには、そう映す(撮る)ことしかできなかった。
そしてカメラは、こうも言った。
「価値基準においては、“反対”なんて存在しないんだ。君が勝手に“反対”と思っているだけだよ。」
もちろん鏡は反発した。
「なんだと!オレはな、世の中にある価値基準を“反対”にしているんだよ!そう映しているんだ!」
言っても聞かない鏡に対し、カメラは、ある実験を提案した。
普通の鏡を2つ持ってきて、嘘つきな鏡と向かい合わせる。
(3すくみのように)
そうすると、何かを映せば、鏡の中で永遠に映像が続く。
たとえば、美しい花を映すなら、美しい花と醜い花が、鏡の中で交互に続くはずだ。
価値基準における“反対”を映す鏡であるなら、そうなるはずなのだ。
カメラは、実際に美しい花を鏡の間に置き、鏡に映った無限に続くモノをのぞきこんでみた。
そこには、美しい花も、醜い花もあった。
しかし、それ以外の花も映っていた。
青いもの、赤いもの、色がごちゃ混ぜになったもの、細かったり、太かったり、1枚の花びらだけが美しいもの…などなど。
そこに、“反対”というものは感じられなかった。
“反対”とは、何か基準があって成立する言葉だからだ。
そこには多種多様な花が、色を変え形を変え、鏡の奥の奥まで続いていた。
「ほら、“反対”じゃあないでしょ。君は、映るものを面白半分にいじっていただけなんだよ。」
と、カメラは言った。
鏡は、認めざるをえなかった。
これまで信じていた自分が…自分らしさが、パリンパリン割れていくような感覚だった。
鏡は、悔しく、悲しく、落ち込んだ。
水滴が、涙のように鏡の表面をつたって落ちた。
だが鏡には、カメラへの反発心もまだあった。
「おいカメラ!お前は現実を現実のまましか映すことはできなかったよな!」
「うん。それしかできない。それが好きでもあるけどね。」
「じゃあ、オレからも実験の提案があるぞ。このオレ(鏡)に映った現実でないものを撮ってみろ!」
カメラは、その突拍子もない提案に、おどろき、とまどった。
だが結局、鏡の迫力に負けてしまい、カメラはシャッターを切ることにした。
実際はカメラも、その突拍子もないことを試してみたかったのかもしれない。
パシャッ!
現実にはないものを、現実しか映すことができないものが映したとしたら、どんなものが見えるのだろうか?
鏡もカメラも、写真が出来上がるのを、固唾を飲んで待った。

