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飛び降りたカメ
【不思議なプチストーリー・13】 〜カメはゆっくりと、しかし確実に…〜
カメはある日、「もういいな。」と思った。
「もう、いいんだ。」と。
そう思ってから13日後の夜、カメは崖の上から身を投げた。
13日間、ひたすら崖を登った後のことだった。
高い、とても高い崖だった。
カメは何事も、ゆっくりと、だが確実にものごとを進めるのだ。
飛び降りると、風の音がすごくて、波の音が聞こえなかった。
カメは風の音が、「まるで音楽みたいだな。」と思った。
カメは、風の旋律に合わせて歌おうと思ったが、泣き声すら発したことのない口からは、何も音は出てこなかった。
カメはしかたなく、急激に近づいてくる水面を黙って見つめた。
水中で暮らしていたカメにとって、“落ちる”ということは初めての体験だった。
そして、“速い”という体験も初めてだった。
カメは、フィナーレを迎える直前に、「こういうのも悪くないな。」と思った。

