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憂鬱に恐怖する大男
【不思議なプチストーリー・12】 〜たたずむ大岩から感じること〜
大男は、自分が強い男だと自負していた。
いや、自分は強いと思っていたかった。
強い自分ならば、岩なんて、自分の拳一つで砕けるだろうと思った。
いや、思いたかったのか。
大男は、自分で自分が強い男だと確認するために、岩を砕こうと、拳をふりかざした。
しかし、大男の頭に浮かぶイメージは、岩によってグシャグシャに潰れた自分の拳と、挫折して立つこともできなくなった自分の姿だった。
砕こうと思えば思うほど、自分の情けない姿のイメージも強くなった。
そのイメージは、やがて大男の頭にこびりつき、根をはった。
困る必要がないことをひたすらに困り続ける「憂鬱」。
その憂鬱に、大男は恐怖した。
大男は、叫びたかった。
叫びたかったが、声が出なかった。
大男は、声すらも出せないでいる自分の心の奥底で、何かが折れる音を聞いた。
そんな気がしたとたん、気を失ってしまった。
岩は、大男が砕こうとしている間も、大男が気を失ってからも、変わらずにたたずんでいた。
岩は、ただそこにあり続けただけなのだ。
そして岩は、もう大男が自分に向かって拳を振りかざすことはない、ということを知っていた。

