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悲しいアリ
【不思議なプチストーリー・8】 〜アリの涙と大きな雨粒〜
みたみたと雨粒が落ちてくる日だった。
ひっきりなしに、みたみたと。
アリは水がやってこない所で、じっとしていた。
水の玉が、ばしんばしん地面にあたってくだけるのを見ながら。
アリはふと思った。
「ここにチョコレートのかけらでもあればなぁ。」
「あれば・・・。」
アリは思いだした。
先日の健康診断で、糖尿病の可能性あり、と、診断されたことを。
チョコレートのかけらがあれば、あれば・・・。
甘い匂いをかげるな、すくなくとも・・・うん。
アリは、甘い味をともなわない甘い匂いとは、はたして素敵なことなのだろうか、と、自問してみた。
考えても考えても、それが素敵なことなのかどうか、アリには分からなかった。
再びアリは、ばしんばしんくだけつづける水の玉を見つめる作業にとりかかった。
雨粒はみたみたと落ちつづけた。
どこかで、チョコレートのかけらの落ちる音が聞こえた、と、アリは思ったが、それも雨粒のはじける音で、かき消えた。

