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空飛ぶエビ
【不思議なプチストーリー・3】 〜ある日見つけた変なモノ〜
トシオが“それ”を見つけたのは、日曜日のお昼前だった。
普段なら休日は家でゴロゴロしている父親が、めずらしくトシオを散歩に誘った帰りだった。
家では、母親が昼食を作り終えるころだろう。
“それ”は、エビの形をしていた。
“それ”は、羽で飛んでいた。
“それ”は、目の前にいた。
「お父さん、あれ、なに?なんていう虫?」
トシオは手を引いている父親にたずねてみた。
「ん?どれだい?なんのことをいっているんだい、トシオ?」
父親は“それ”には気づいていなかった。
おかしなこともあるものだ、父親の視界に“それ”は入っているのに、気づかないのだ。
「お父さん、それだよ。その目の前に飛んでるヤツ!」
トシオは、父親が気づいてくれないのがもどかしくて、指差しして、少し興奮しながら叫んだ。
だが、父親は気づいてくれなかった。
家に帰ってきて、トシオは母親にも“それ”のことを話してみたが、まったく取り合ってくれなかった。
母親は、
「はいはい、そうなの〜。」
としか言ってくれなかった。
柴犬のポチにも話してみたが、
「ワン!」
としか言わなかった。
数日後…。
トシオが一人で遊んでいると、また“それ”を見つけた。
トシオは、はじめは興味を持って眺めていたが、先日、誰も取り合ってくれなかったのを思い出した。
トシオは、自分が“それ”を見えないということにした。
もちろん見えてはいるのだが、“見えない・見えていない”ということにした。
トシオは、自分が大人になったと感じた。

