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象のボクサー
【不思議なプチストーリー・1】 〜もしも象のボクサーがいたら〜
「ダウーン!!…ワン!ツー!スリー!…」
レフェリーがカウントを数えている。
数えても無駄だというのに。
なにしろ、倒れたボクサーは、白目をむき、体は痙攣し、口からよだれまでたらしているのだ。
気を失っているのは明白だ。
もはや立つことはできないだろう。
象のヤツは、今夜もすごいパンチ力を見せつけてくれた。
動きは鈍いが、パワーが違う。
半端なパワーじゃない。
先日の試合では、パンチを食らった対戦相手は、マウスピースごと歯がぶっ飛んだらしい。
戦慄の破壊力だ。
普通の選手なら、「頭突きは反則」なんて注意をもらうが、
象のヤツは、違う。
ヤツには、4万もの筋肉で構成されているという長い鼻がある。
米粒だってつかめてしまうという正確な動きで、力強く、しなやかに、うねり狂うのだ。
「頭突きは反則」なんていうのとは、レベルが違う。
そしてヤツには、牙もある。
あの象牙でひっかかれ突き刺されるのは、考えただけで恐ろしい。
しかも、拳に牙が刺さりそうだから、相手はうかつにパンチも出せないだろう。
レフェリーも、「象選手は総入れ歯にしてから試合に出てください。」とは言えまい。
凶器検査で牙を引っこ抜くことなんて、なおさら無理なはずだ。
今夜もこのダウンで勝負は見えたようだ。
レフェリーも、もうすぐK.Oを宣言するはずだ。
だがしかし、やれやれ、いったい誰がヤツに勝てるというのだ。
次の対戦相手は…、いや、生贄は、どの選手だろう…。

